キカイ×ワールド

東京大学 高木研究室 インタビュー

流体工学研究室インタビュー

Lab Data

名称:東京大学 大学院工学系研究科 機械工学専攻 / 工学部 機械工学科 流体工学研究室(高木研究室)
PI:高木 周
URL:https://www.fel.t.u-tokyo.ac.jp/index.html

高木教授へのインタビュー

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ーー研究内容についておしえていただけますか

私たちは流体工学研究室で、水とか空気とかの流れを扱う流体力学という学問をやっており、その工学的な応用をしています。空気の流れと水の流れは違うものに思えるかもしれませんが、実は、水と空気の流れは同じ方程式によって記述することができるんです。この式は学校で習うような数学では解けないことが多いんです。そこでスーパーコンピューターを使うことで、その式を解き、水や空気の流れを精度よく再現することができるんです。スーパーコンピューターを用いたり、また実験を行ったりして、空気、液体の流れの「謎解き」をする、という学問を私たちは行っています。

ーーウェブサイトを拝見したところ、医療に関する研究などをされているようですが、流体に関する全般の研究を行っているという認識で合っていますか?

いろんなことをやっているので、全般といえば全般ですね。実はですね、流れていないものもやっていたりもします。例えば、体の中を見る超音波診断や超音波を体の中に当てて癌をやっつける超音波治療などがあります。超音波って体の中を伝わっていくだけなので流れていないんですけど、実は超音波が体の中を伝播する式というのは、先ほど言った流れを記述する式とほとんど同じなので、うちの研究室の研究対象となっています。
一番得意なのは、水の中に小さなつぶつぶが入っているようなものです。私自身の博士論文でも取り扱ったんですが、水の中に小さな気泡が入っている問題を専門としています。例えば、血液。血液は液体のように思えるかもしれませんが、実は血液の全体の体積の40%くらいは赤血球なんですね。赤血球は両凹円盤型みたいな形をして、ぐにょぐにょ変形しながら血管の中を流れていくんですが、これは細い管の中を流れている気泡とよく似たところや異なるところがあり、そこを比較するのもうちの研究室の研究対象です。

ーー研究を始めたきっかけ、この分野に進もうと思ったきっかけはなんですか?

そうですね。私が学生のころに、水道の蛇口をひねっておいて、スプーンを近づけると、スプーンが水道の蛇口から出てくる水にスプーンが触れた瞬間に、グッと引き込まれるっていう現象を見る実験を行いました。直感的には水がジャーッて流れてるんで、弾き飛ばされるんじゃないのかなと思ってたんですね。それが吸い込まれるという現象が純粋に面白いなって思いました。そこから流れの力学に興味を持ったら、実はそれが飛行機が翼で浮き上がることとつながっていることがわかって。そうするとスプーンの周りの水の流れと飛行機が飛び上がる空気の流れがほとんど同じことが説明できて。しかもその先には同じ方程式で記述、表現できるっていうのがあって。すごく神秘的というか、しかもそれが普通の数学では解けない。普通の数学では解けない式があって、でもその式で解かれた結果は自然現象をよく説明していて。水の流れ、スプーンが吸い込まれる話も、飛行機が飛ぶ話も、同じ話で繋がってるっていうのが、ものすごく面白く思いました。
学生の頃の別の実験では、水の流れの中にインクを垂らしたとき、層流と呼ばれる流れの時はインクがスーッと流れていくのに対し、乱流ではバシャバシャと暴れている様子を観察し、詳しい説明を聞き、「あっ、これ面白いな」と思いました。
しかも、工学的にいっぱい応用があります。自然現象でも台風や大気海洋のようなことにも同じ話が入っています。

ーー現在挑戦している研究はありますか?

今研究室でやっているテーマの一つに、南鳥島沖の海底6000メートルにレアアースの資源がたくさんある、という話が今ニュースで話題になっていると思いますが、そのレアアースを海底から持ち上げるための技術開発を行っています。コップに入っているジュースをストローで吸い上げる時は、ジュースは吸いあがりますよね。しかし、6000メートル下のものを吸い上げるとなると、これは普通のポンプでは至難の業なわけですよ。無理やり吸い上げようとすると、ものすごく低い圧力で吸い上げることになり、水の蒸発が起こってしまい、水蒸気ばかり吸い上げてしまうことになります。さらにポンプを6000メートルの海底に沈めるとなると、故障したときに修理するのがものすごく大変です。
そこで、私たちはエアリフトポンプという揚鉱技術に取り組んでいます。これは、海底に続くポンプの途中に圧縮した空気を送り込み、パイプ内の水に気泡を混ぜることで密度を下げ、パイプ内外での圧力差によりパイプ内の資源を押し上げる方法です。少し効率では劣りますが、ポンプを海中に置く必要がなく、船上におけばよいので、圧倒的にメンテナンス性がよいです。しかし、先日、JAMSTECがレアアースの採掘、揚鉱に成功しましたが、こちらには違う技術が用いられました。このように複数の選択肢があるうえで、実験データを集め、どれだけ安全に、壊れることなく使えるか、ということを検証していく必要があります。

もう一つ研究室で研究対象としている技術としてドラッグデリバリーシステムというのがあります。ドラッグデリバリーシステムって何かというと例えば、がんを治療したいって時に普通に薬を飲む場合だといろんな副作用がでて、がんをやっつけられるけど、他の部分に悪い影響を与えてしまうこととかある。ドラッグデリバリーシステムはがんがきた時だけその薬を放出するっていうもの。実際に効果があるものも現在ある。しかしカプセルが非常に小さくて50nm 100nmといったとても小さなカプセルに薬剤をいれる。一個当たりに入れられる薬剤の量が必ずしも大きくない。現在、基礎レベルとしてやっているのが5ミクロンくらいの毛細血管をすり抜けるくらいの小さなカプセルにマイクロバブル(小さな気泡)をいれる。体積でいうと100万倍従来のものと比べて入れることができる。なぜ従来のものが小さかったかというと、がん細胞にある穴の大きさが50ナノメートルだったから。5ミクロンだと穴を通り抜けられなくて、ただ素通りしてしまう。そこで体の外から超音波をあてて小さなカプセルの中の気泡をうごかして、カプセルを破壊して中の薬剤を放出する。 さらには船舶の抵抗軽減なども扱っている。
学生は三年時に研究配属されると上のような研究などから学生の希望を聞いて、携わることもできる。

ーー研究室選びを控えている学生に向けてメッセージをおねがいします。

研究テーマが自分の想定していないものやきぼうしていなかったものだったとしてもやってみると面白いと思える。私自身もエンジンの研究を当初はしたいと思っていた。エンジンの研究は当時とても人気があって残念ながら研究できなかった。それで流体の研究室に行くことになった。研究をやってみると思ったよりおもしろかった。自分の研究室で一番大切にしているのはまずは好奇心をもってどハマりするっていうのが大切です。もちろんこの応用があるあの応用があるなど考えるなどすることはよいがなんか神秘なもので未知なものをやっているうちに謎解きがおもしろくなってきてくる。上のエアリフトポンプやドラッグデリバリーシステムといった応用例でも実は流体力学的にわかっていないことは実は多い。このような謎解きをすることがおもしろい。

研究室の学生へのインタビュー

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ーー研究内容を教えてください

渡辺優さん:
船や海上設備など、水の上や中で使われる構造物は、水の力を受けて動きます。例えば、船を進水させると、着水直後に船体が揺れたり傾いたりしながら、しだいに安定した姿勢になります。こうした水と物体が互いに影響し合う動きを正確に予測することは、安全な設計や事故防止のために重要です。
本研究では、水・空気・物体が同時に関わる現象をコンピュータ上で再現するシミュレーション技術の開発に取り組んでいます。水や空気の流れ、物体にかかる力、物体の動きをまとめて計算することで、現実に近い複雑な現象の再現を目指しています。現在は、物体が水面に落下して沈んでいく際の物体の動きや水面の変化を解析しています。将来的には、船舶や海洋構造物の設計、安全評価、防災分野などへの応用が期待されます。

山下航輝さん:
ニューロモジュレーションという技術の研究をしています。ニューロモジュレーションは超音波を用いて行います。超音波は水中を伝わるので流体と同じように記述することができ、流体工学としての研究となっております。標的となる細胞の周囲にマイクロバブルを送り込み、そのマイクロバブルを超音波によって振動させることで細胞に働きかけることができます。

ーーなぜ流体工学研究室に入りましたか?

渡辺さん:
オープンラボに行ったことがきっかけでした。高木先生が面白そうに研究の紹介されていて、その熱意に惹かれました。

山下さん:研究室の移動があったのですが、私として生物に関わりたいことをやりたいと思っていたので、この研究室に入りました。

ーー研究室の雰囲気、研究環境はいかがですか?

とてもいい研究環境だと思います。研究費も多いです。雰囲気としてもとても居心地が良いです。コアタイムもなく比較的自由です。

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