名称:東京大学大学院 情報理工学系研究科 知能機械情報学専攻 葛岡・谷川・鳴海研究室
PI:葛岡 英明
所在地:本郷キャンパス工学部2号館8階 83D4
研究分野:人間拡張、VR、ヒューマンインターフェース
URL:https://www.cyber.t.u-tokyo.ac.jp/ja

私たちの研究室では、VR(バーチャルリアリティ)やロボット技術を活用して、「人間の能力そのものを拡張する」ことを目指しています。
単に便利な技術を作るのではなく、「人はどのように感じ、認識し、行動しているのか」という根本的な問いに向き合いながら、新しい体験や可能性を創り出す研究です。
一つ、注目しているのは、クロスモーダル現象です。これは、ある感覚が別の感覚の影響を受けて感じ方が変化してしまう現象のことです。
例えば、かき氷にかけるシロップは、実は全て同じ味なのですが、色を変えたり、香料で香りを変えたりして、色々な味があるかのように人間に錯覚させています。このように、人間は他の五感で補って、本当はしない味を感じることができます。
この仕組みは、医療的な応用が期待できます。
例えば、食べているのはそうめんなのに、そのそうめんにVRでラーメンの映像を被せると、少しラーメンの味がします。これは、病気でラーメンを食べられなくなってしまった人が、自分でなんとかしようとしてこのような研究に結びつきました。
これを医療に応用することもしています。クッキーを食べる時に、そのクッキーを少し大きくした映像を被せます。すると、少なめの量を食べても、満足感を得ることができます。これは実際に、食後の血糖値の推移を調べることで検証できました。
▪️心と身体の関係を探る「ゴーストエンジニアリング」人の「身体の認識」を変えることで、行動や思考そのものが変化することもわかっています。
例えば、
といった現象が報告されています。 このように、「自分の身体をどう認識しているか」が、認知や行動に大きく影響する点に着目し、心と身体の関係を工学的に扱う研究を進めています。
VR空間で、熟練者と初心者が同じ身体を共有して動作するという研究も行っています。
例えばスポーツにおいて、あまり得意じゃない人と上手な人がいて、その空間の中では彼らの動きを融合して見せてあげるということをします。
自分の動作に熟練者の動作を重ね、熟練者の動きを”体感”として学習することができます。その混ぜ方を50%ずつなどにすると、自分でやっているという感覚(=自己効力感)が高まって、通常よりも効率的な技術習得が可能になることがわかっています。
また、この熟練者をAIに置き換えることで、より効率的な新しい学習支援の形を目指しています。
VR空間の中だと、手の届かないところに手を伸ばして操作したりします。その際に、どうやって手を伸ばすかということが一つ研究課題となっています。 簡単な方法では、ワンピースのルフィのように手を実際に伸ばすという方法もありますが、我々の研究室では視線と連動させて見たところに手がパッと飛ぶというアプローチをしています。そうするとより直感的に操作できるということがわかっています。
▪️人とロボットの関係を変える「超現実コミュニケーション」ロボットの視線や動きを制御することで、
といった、より自然で豊かなコミュニケーションが可能になります。 人とロボットが共存する社会において、こうした細やかなインタラクションは非常に重要な要素となります。
▪️インクルーシブ身体性インターフェース障害を持った人とのコミュニケーションや実生活を支援するということをやっています。 例えば体が動かなくなってしまった人でも、指先だけで操作できるロボットをつくったり、視覚障害者と晴眼者とのコミュニケーションを支援するロボットを作ったりしています。
私は日々、授業や学生との相談、共同研究の打ち合わせなどに多くの時間を使っています。
その合間に、自分の研究や論文執筆を進めています。
学生は個人研究に取り組むだけでなく、グループで議論しながら研究を進めることも多いですね。
グループごとにミーティングを行い、勉強会なども積極的に行われています。
時にはゲームなんかもしていますね。この研究室はVRがテーマということもあって、ゲームは禁止していないです。私自身も、できるだけ最新のゲームに触れるようにしています。そんなにやらないんですけれどね(笑)。
▪️研究スタイル学生さん一人一人で違うとは思いますが、個人の研究とチームの研究、感覚としては半々くらいですね。学生のプロジェクトがきっかけで研究が進み、その成果を国際会議で発表したりもします。
チームの研究もいいけど、自分の研究も進めたほうがいいんじゃない?なんてたまに声をかけるくらいにはチームの研究が多いです。
学部生は、学術的な研究ってどういうものか、ということを学ぶ段階にあります。最初の2ヶ月くらいをかけてプロジェクトをしてもらいます。先輩に教わりながら、実験の進め方、どうまとめれば良いか、プレゼンの仕方、などを学びます。
この研究室はすごく先生と学生の距離が近いと思います。もう一人鳴海先生という先生がいるのですが、まだ若くて学生との年齢も比較的近いですし、彼自身がすごく学生一人一人に研究指導をなさる先生だということもあって、学生さんも相談しやすい環境になっていると思います。
学生さんからちょっと打ち合わせさせてくださいとか、論文見てくださいみたいなメールが頻繁にきます。
また、機会があれば合宿したりとか、高尾山に登ったり、スキーをしに行ったりしています。学生さんだけで旅行に頻繁に行っているようです。 研究室としては、新歓や追いコンなどが年に4回くらいありますね。
人とロボットのインタラクションに関する研究を行ってきたので、ロボットを色々作ってきました。
自分が何かロボットを提案すると、学生さんが想像以上のものを作ってくれるというのが面白いですね。
印象的なエピソードとして、美術館にあるようなロボットを作ろう、というテーマで、芸術を専攻している学生さんと一緒にロボットをデザインしたことがありました。それは、うちの学生だけでは作れないデザインの発見があり、それに対しうちの学生が「ではこういう機構はどうだろうか」などとディスカッションして作り上げました。とても印象に残っています。
今後は、AIがとても重要な役割を果たしていきそうです。AIをどう使えば人の能力をさらに拡張していけるかということにとても関心があります。
これまで人と人、人とロボットとのコミュニケーションを専門に研究してきましたが、そこにAIが介在する、人とAIの新しい関係性が重要なテーマになります。
ただし、AIが介入しすぎると人間の能力が低下したり、「自分でやった」という実感が失われるかもしれないという課題もあります。ですから、人間の能力を強化するAIが求められています。
機械系というと、「四力学をひたすら学ぶ」というイメージがあるかもしれませんが、それはあくまで基礎です。その上に、自分の興味や関心を重ねていくことで、研究はぐっと面白くなります。
自分の興味のあるもの、これは趣味でもなんでもいいので、それを大きく伸ばして、それをVRや機械工学やAIを使って支援するという考え方をすれば、とても研究が楽しくなります。
機械工学では物も作るし、AIなどのソフトウェアの教育もしています。いろいろな興味を持った人がその興味を広げることができるので、あらゆる人におすすめできます。
特にVRやソフトウェアに関心のある方は、ぜひ一度この研究室に足を運んでみてください。

VRを使って新しい技能を身につける上で、どうすれば効率的に学習できるかということを研究しています。最終的にはスポーツやダンスの分野での応用ができることを目指しています。今は基礎学習の段階で、VRの人への効果を検証しています。
とても恵まれていると思います。博士の人数が多い研究室で、和気あいあいと楽しく研究を進めることができます。
同期とご飯を食べながら研究の話をしたり、学会に一緒に出たりということが楽しいです。
助教や先輩に教わることが多いです。
この間、学部3年の人が来ました。彼はコードの書き方や研究の進め方をわかっているわけではありませんでしたが、研究したいというテーマがあり、一緒に研究することになりました。研究を進めているうちに、必要なスキルは徐々に身についていったようです。
こんなこともできるので、スタートダッシュは早い方がいいと思います。今はAIもあり、特にソフトウェアの勉強を始めやすい環境ですので、ぜひ興味のあることは早めに始めてみてください。