名称:東京大学大学院 工学系研究科 精密工学専攻 / 医学系研究科 次世代内視鏡システム開発講座(原田研究室)
PI:原田 香奈子
所在地:本郷キャンパス 医学部臨床研究棟A817
研究分野: 医工連携、バイオメディカルロボティクス、ライフサイエンス支援、ロボット外科
URL:https://harada-lab.t.u-tokyo.ac.jp/

学生: まず、研究室の全般的なテーマについてお伺いしたいです。
原田教授:私たちの研究室では、分野横断的な研究が多く、「医工連携(医学と工学の連携)」や「科学者と工学者の連携」というテーマで取り組んでいます。技術的には、バイオメディカル分野やライフサイエンス分野を支援するためのロボット、あるいは「ロボットを使った科学」の研究をしています。

学生: 工学部の中でも特に医療方面、医工連携に進もうと思った理由やきっかけはありますか?
原田教授: 機械を使って人を助けるようなことがしたかったんです。機械って、人間を真似るだけじゃなくて、人間より優れているところもあれば劣っているところもあって、人間とは違う存在ですよね。だからこそ、人間の医師とは全く違うアプローチで治療を提供して患者さんの命に貢献したり、科学者とは違うアプローチで未知の科学的発見をしたりすることに魅力を感じました。

学生: 他の医用工学の研究室と比較して、原田研究室ならではの手法や技術はありますか?
原田教授: ひとつ大きな特徴は、私が医学部系に所属していることです。ここは医学部の建物の中にあり、病院もすぐ隣にあります。医学部に所属しながら工学的な研究をするという立ち位置の違いがあります。
手法としては「インテグレーション(統合)」を重視しています。必要な技術を集めたり、新しい技術を作ったりして、工学的な新しさとユーザーへの貢献を両立させることを目指しています。ニーズ・ドリブン(現場の需要)とシーズ・ドリブン(技術の種)をいかにうまく組み合わせるかが、私たちがやりたいことです。
学生: 学生時代はどのようにお過ごしでしたか?
原田教授: 私は東大の精密工学科の出身です。当時はまだインターネットがあまり普及していなくて、どこに行けばいいか分からず「理科二類ならどこへでも行ける」という噂を聞いて進学しました(笑)。手術ロボットの研究室に入り、医学に役立ちたいという志を同じにする仲間に囲まれて過ごせたのは、とても楽しかったです。
学生: 高校生の時にきっかけがあったのですか?
原田教授: 中学生か高校生の頃、NHKで人工心臓などの医療の特集を見たのがきっかけです。医療や看護には興味があったのですが、血を見るのが少し苦手だったり、自分がおっちょこちょいな性格だったりしたので(笑)、医者になるよりも工学を使って医療や福祉に貢献する道があるんだと気づき、この道を選びました。
学生: 学生時代の思い出はありますか?
原田教授: 私は「加工」が好きでした。放電加工機などで、先輩がパラメーター設定を鮮やかに決める姿に憧れて、自分でも色々と削って遊んでいましたね。
学生: 医療従事者と一緒に研究する中で、刺激を受けたことはありますか?
原田教授: 医師の視点は工学とは全く違うので、非常に刺激的です。工学は「目的(物を作ること)」が明確ですが、医学は「結果(患者が助かること)」が目的です。極端に言えば、結果さえ良ければ作るものが途中で変わってもいい。その「目標が常に動く」医学と、「目標を定めて作る」工学の折り合いをつけるのが、大変でもあり醍醐味でもあります。
学生: 失敗談などはありますか?
原田教授: 医師の方は工学的な難易度が分からない場合もあります。例えば「もう少し小さくして」と言われたとき、それがプログラムを一行変えるだけで済むのか、設計図からやり直しなのかが伝わらないこともあります。
よくフォード(自動車メーカー)の例えで「顧客に何が欲しいか聞いたら『もっと速い馬が欲しい』と言っただろう」という話があります。医師の「速い馬が欲しい」という要望を、工学者が「早く移動したいんだな」と翻訳して「自動車」を提案する。そういった「ニーズの翻訳」が重要だと痛感しています。
学生: 現在の構成はどのようになっていますか?
原田教授: 学生は十数名ほどです。学部生はいなくて、修士・博士の学生、それから助教やポスドクがいます。精密工学専攻とバイオエンジニアリング専攻から半分ずつくらい来ています。留学生も多く、研究会などは基本的に英語で行っています。
学生: 教授の日常はどのような感じですか?
原田教授: 大学の先生の仕事は多岐にわたります。大学のマネジメント、教育、そして研究の方向性を決めたり予算を獲得したりすることです。最近は書類仕事などの「雑務」も多いですね(笑)。
学生: 研究室の雰囲気はどうですか?
原田教授: 私は以前イタリアでポスドクをしていたこともあり、マインドは「自己責任」に置いています。マイクロマネジメントはせず、主体性に任せています。自由にやりたい人には向いているかもしれません。
学生: 卒業生の進路はどうなっていますか?
原田教授: 日本人の学生は修士で就職する人が多いですね。メーカー、医療関係、あるいはコンサルティングなど様々です。最近は企業側も博士号を持つ人材を求めるようになってきています。
学生: 原田先生のこれからの「夢」を教えてください。
原田教授: 人間とは異なる「身体」や「知能」を持った機械と人間が協働して、治療や科学の発展に貢献する社会を作ることです。
人間を単に置き換えるのではなく、ロボットならではの強みを活かしたい。洗濯機の例が分かりやすいのですが、洗濯機は「人間が手で洗う動作」を真似ているわけではなく、「汚れを落とす」という目的に特化してあの形になりました。ロボットにも、人とは違うアプローチで社会を良くしてほしいと思っています。

学生: この分野に興味がある学生にアドバイスをお願いします。
原田教授: 「自分と違う意見」を面白がれるポジティブな態度を持ってほしいです。価値観が違ってもそれは悪いことではない。そう思えれば、分野の垣根は越えられます。
あとは、自分の「一本芯の通った専門性」を持つこと。「餅は餅屋」というように、工学の専門家として医師と対等に話せるようになることが、良い医工連携への近道です。
学生: 研究室選びは大事ですね。
原田教授: 最後は「ご縁」です。自分が一日何時間も費やせるくらい好きなことと、将来の展望が重なるところを選んでほしいなと思います。頑張ってください。
学生: 本日はありがとうございました。

Aさん:研究者の負担削減のため、生物学実験で用いられる培地を作るプロセスを自動化するというプロジェクトに入っています。従来のロボットではピペットを使い捨てのチップにつけるという精密な動作がまだ自動化できていないないのでそこに取り組んでいる感じです。
Bさん:自分は手術ロボットに関する研究をしています。特に遠隔の眼科手術に関する研究です。遠隔のロボットで二つのアームを用いるというのは原田研だけがやっていることです。遠隔の手術ロボットはとても難しいですが、制御を用いて実現したいと考えています。
Cさん:実はテーマをまだ模索中です。ロボットやシステムに慣れるのに時間がかかるため、この研究室はテーマが決まるのが遅めのように思います。デジタルツイン技術を用いて何かできたらなと検討しています。
Dさん:私が今やっているのは、ロボットアーム2本の協調動作をどれほど精密にできるかということです。ロボットアームが2本ある時、互いがじゃまにならないような制御を研究しています。
Aさん:学部時代は別の大学で機械を学んでましたが研究室が消滅しまして...医療系にも興味があったので原田研に来ました。
Bさん:機械A出身ですが転々としてました。ただどの研究室でも医療工学に取り組んでいたのでここに来ました。
Cさん:私も他大ですが元々細胞とかを扱う生物よりの機械系の研究室にいました。ただやはり自分で物を,ロボットを,動かす方が楽しいかもしれないと思ったからです。
Dさん:ロボットアームをしっかり動かす、従来型のロボット研究をしたかったからですかね。
Cさん:どうだろう。結構難しいですね。でも一番は多国籍ってことでしょうか。
Aさん:確かに。
Bさん:海外から来てる人も多いから質問のハードルは最初は高かったと思います。
Dさん:あと自由な研究室ですかね。
Bさん:確かに。コアタイムみたいなのがきっちりなくてそれぞれ自由な時間にきて好きなように研究する感じです。他の機械の研究室とは大分雰囲気が違う気がします。
Cさん:ただ各々自由に進めていくけれど、先輩もしっかりいるし、聞く人には困らない感じもします。やりたいことをやれる。
Bさん:何かやりたいと思った時に原田研にはその分野のプロフェッショナルがいて、必ず答えが返ってきますね。言語の壁はありますが、そこさえ超えれば逆にどこまでも突き詰められます。
Dさん:そうそう。自分から動けばなんでもできる感じですね。
Aさん:こんなに最先端のロボットがあるのは東大でも珍しいと思います。ロボットを動かしたい人に向いてるかな。
Bさん:さっきも言いましたが多国籍なので英語能力が身に付きます。海外の人とも交流できますね。
Cさん:ただ英語得意じゃなくてもなんとかなるんで。気軽に飛び込んでほしいです。
Dさん:原田研ではソフトやるし、3Dプリンターもあるのでハードもあるので身につくスキルが多いです。電気だってできます。色々やってみたい方にぜひ。